建築基準法では、暮らす人の健康のため「換気設備」の設置が義務付けられています。今回はプランニングの前に知っておきたい住まいの換気の種類と特徴をまとめました。
■建物に適した換気プランが必要に
住まいにおける換気はとても重要です。昔に比べて、気密性が優れる現在の住宅の場合、不十分な換気では湿気による結露が生じやすく、建物の老朽化を早めてしまうケースも。また、新鮮な外気を取り入れにくく、汚れた空気が室内に滞留してしまい、暮らす人の健康に影響を及ぼすこともあるかもしれません。
■換気設備の設置は、シックハウスの対策のひとつ
目がチカチカしたり、喉が痛くなったり、吐き気や頭痛などの症状があらわれる「シックハウス症候群」。その原因のひとつとして、住まいに使われている床・壁・天井材といった建材や家具、生活用品などから発生する化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど)が挙げられています。こうした「シックハウス症候群」対策のため、建築基準法では、化学物質の発散量の少ない建材を使うこと、そして、換気によって室内の化学物質の濃度を低減させるため、原則としてすべての建築物(一部の気密性が低い住宅を除き)に機械換気設備の設置が義務付けられています。たとえば、住宅の場合では換気回数0.5回/h以上(1時間に何回外気と入れ替わるかを表す)の機械換気設備の設置が必要。つまり、1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わるような計画が必要ということになります。
■換気の種類と特徴
そもそも換気とは、部屋の中の汚れた空気と新鮮な外気を入れ替えること。屋外の空気を取り入れ(給気)、屋内の空気を追い出す(排気)のことです。
日常の暮らしの中では、「窓を開けて新鮮な空気を取り入れる」「キッチンやトイレの換気扇を回して、汚れた空気を外に出す」などが身近なものでしょう。換気はいくつかに分類することができます。
- 換気を行う範囲 「局所換気」と「全般換気」
換気をする範囲によって「局所換気」と「全般換気」に分類することができます。キッチンやトイレ、浴室など一部分での換気が「局所換気」、住宅全体の換気は「全般換気」と呼ばれています。
- 換気方法 「自然換気」と「機械換気」
換気の方法では、「自然換気」と「機械換気」に分けられます。「自然換気」は、自然の風や温度差などにより室内の空気が入れ替わることで、換気量は一定しません。「機械換気」は換気ファンなどの機械によって強制的に給排気を行うもので換気量を確実に確保できるメリットがあります。
- 「機械換気」の運転方法 「連続運転」と「間欠運転」
「機械換気」はその運転方法によって常時の汚れ、臭気の発生源(主に居室など)を換気する「連続運転」と一時的な汚れ、臭気の発生源(キッチン、トイレ、浴室など)を換気する「間欠運転」とに分類することができます。
■「機械換気」の方法には3つの種類がある
「機械換気」は換気ファンなどの機械を設置する方法。換気ファンは給排気の両方か、いずれか一方に必要となりますが、その設置の仕方、仕組みによって、第1種、第2種、第3種の3つに分類することができます。機械を用いて空気を計画的に入れ替え、新鮮な空気を常時維持する、いわゆる「24時間換気システム」などは、この機械換気設備になります。一般的な住宅に用いられるのは「第1種換気」と「第3種換気」です。
■常時運転が基本。適したメンテナンスを
シックハウス対策として換気を考えると換気設備を設置すれば大丈夫というわけにはいきません。機械換気は常時運転することが基本ですので定期的な掃除・メンテナンスは忘れずに。効率的な換気のためには、機器の取扱説明書に沿って排気口や給気口、フィルターや屋外フードなどの清掃を定期的に行うことがポイントです。