静かに暮らせることは、家の大切な条件ですが、住宅間の距離が取りづらく、幹線道路や鉄道が近い所では、実現するのは難しいかもしれません。昼間はあまり気にならなかったとしても、深夜や早朝、車の音で目が覚めたりすることはよくあること。また、外からの騒音だけでなく、自分の家から出る音が近隣に住む人の迷惑になっていないかも気になるところです。そこで今回は、自宅の防音、遮音について考えてみましょう。
■音の種類はさまざま
音にはさまざまな種類があり、空気を伝わって耳に響く「空気音」や、壁や床などの個体を伝わってくる「個体音」などがあるといわれています。また音の感じ方は人によってさまざまですし、2階で歩いている音も家族なら気にならないなど、音の種類や、騒音の理由によって不快に感じる・感じないは違ってくるようです。しかし一般的に、住宅の防音・遮音といったとき、外からの音の侵入を抑制すること、家の中の音を外にもらさないこと、家の中における空間と空間の遮音の3つの側面から考えなければなりません。静かな暮らしを送るためにはこの3つの防音・遮音が必要なのです。
■住宅の遮音の第一歩はプランから
静かな住まいにするには、音を遮断することが大切なのですが、音源を遠ざけることも有効な方法のひとつ。そのときポイントになるのはプランニングです。敷地形状や方位、道路付けなどを変えることはできません。当然、家を取り巻く音環境も自分の力ではどうしようもありません。車や鉄道、通行人など外から入ってくる音を最小限にするには、敷地に対して建物をどう配置するか、リビングなどの空間をどこに設けるかなど、どんなプランにするかがカギを握ります。プランを検討するときには騒音の元となる道路や隣家から建物や空間を離すことを考えましょう。ただ敷地は限られているので、騒音の元から離すといっても限度があります。その場合は家の中でリビングや寝室のように滞在時間の長い空間をできるだけ離して配置するようにします。そして音源に近い部分の開口部は最小限にするようにします。大きな窓を設けたいリビングなどを幹線道路に面してとると、騒音が気になって居心地の悪い家になってしまうからです。
■我が家が騒音の元にならないように配置する
テレビやオーディオ機器を置くことが多いリビングは逆に自宅が音源となり、近隣に迷惑がかかる場合があるかもしれません。隣家と接して開口部の大きなリビングを設けることは少ないと思いますが、住宅密集地では防音性能の高い窓を設置したいもの。キッチンの換気扇は開口部を完全にふさぐことが難しいので、ここから外の音が入ってきたり、外部に家の中の音が漏れるということもあるようです。ですから換気扇の位置は十分配慮して決めることが必要です。ピアノなど楽器を演奏する部屋の窓はあまり大きなものにしないほうがよいでしょう。
■遮音だけでなく吸音も取り入れる
さらに静かな暮らしを目指すなら遮音だけでなく、吸音も考えてみましょう。例えば室内の内装材に吸音性の高いものを採用するのもひとつの方法です。音は、表面が平坦で固いものにあたるとよく反射します。逆に細かな凹凸が多く柔らかな素材では反射する率が低くなります。この性質をいかして、内装に凹凸の多い天井材や柔らかな壁材を使用すればある程度の音は吸収されるでしょう。防音をうたった内装材も数多く販売されていますので、設計担当者と相談しながら、必要に応じて選ぶのがよいと思います。床をカーペットにすることも効果が期待できます。表面が平滑で固いフローリングの床の場合、音が大きくなるだけでなく、2階の場合は床から階下へ伝わる「固体音」が気になります。防音性能の高いフローリングもありますが、カーペットにしたり、フローリングの上にカーペットや大きめのラグを敷くことでさらに防音効果が高くなります。この場合、毛足の短い固いカーペットより毛の長いタイプの方が効果的です。また窓のカーテンにもひと工夫しましょう。ブラインドやロールスクリーンより、ドレープをたっぷりとったカーテンを使用すると効果的です。もともとカーテンには、外からの音を和らげ室内の音を外へ漏れにくくしたり、音そのものをソフトにする効果があります。たくさんのヒダが吸音性を高め、生地の厚みが優れた遮音性を生み出すドレープカーテンは更なる効果が期待できるというわけです。