2021年4月から300㎡未満の住宅の新築・増築・改築に際して、建築士から省エネ性能についての説明が義務化されます。これにより新築住宅を建てられるほとんどの施主さんが「省エネ性能への適否」について説明を受けることになります。既に300㎡を超える建築物では省エネの適合義務化は行なわれていますが、今までは300㎡未満の小規模な住宅では建築士は「向上させる努力義務」でとまっていました。今回、改正法が施行されたため、2021年4月以降は省エネ基準に「向上させる努力義務」と共に、適合しているかどうかの「説明義務」が生じることになりました。その結果4月からおうちを建てようと思って計画を始める方は、おうちの省エネ性能について説明を受けることになります。今回は2021年4月から始まる「省エネ性能の説明義務制度」について説明します。
■省エネ性能説明義務化の背景
省エネ性能説明義務化の背景には「日本の住宅の省エネ性能の現状」と「地球温暖化対策」があります。北海道の住宅は省エネ性能は本州などと比べると高いのですが日本全体で見ると世界と比べると低い傾向にあります。地球温暖化対策は世界規模で温室効果ガス排出量を減らすのが目的です。日本では住宅・建築物分野で2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度と比較して約4割削減することが求められています。最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すと共に、2050年までに80%の温室効果ガス排出削減という長期的な目標を掲げているのです。家族でのCO2排出量では、何が多くを占めているかというと約1/3が冷暖房と給湯が占めています。目標を達成するためにはおうちの省エネ化が非常に重要になってきているのです。
■どんな”説明”を受けるの?
説明を行う人は建築士、説明をされるのは施主さんです。説明される内容は大きく2つです。①省エネ基準への適否。建てる家が省エネ基準に適合しているかどうか。②もし設計した家が、省エネ基準を満たしていない場合、「不適合であること」と「どうすれば適合するか」という具体的な方法とそれにかかわる費用です。満たしていない場合は、例えば断熱材を厚くするとかサッシを高性能な物に替えるとかが提案され、そのためにいくら住宅価格が上がるかが示されます。これはすべて書面により説明され、その説明した書類は建築に関わる書類として設計事務所の方で保存図書として保存されます。この省エネ説明義務化では1点注意があります。もし施主である皆さんがこれらの説明を希望しない意思を明確に示した場合、この説明は不要となります。その時は「不要である旨の意思表明書」の提出を求める事になります。設計士としては義務ですので、顧客の意思でその義務を果たさなかったという証拠を残すためです。必ず「省エネ適合基準」を満たしているかの説明を受けるか受けないかは、ご自身で判断しましょう。
省エネ住宅を増やしていく事は社会的にも非常に重要なことでありますし、住む人にとっても快適な暮らしができるだけでなく、健康にも大きな影響を及ぼす重要な性能です。予算との兼ね合いもありますが、よく考えてみて下さい。