政府の方針に沿って、住宅建築やリフォームでもカーボンニュートラル実現に向けて様々な施策が行われます。最も注目すべきは、省エネ基準の引き上げと適合義務化への動きです。何がどう変わるのか???これから住宅を新築したい、今の住宅をリフォームしたいと考えている方は、ぜひ知っておいていただきたい省エネ基準義務化についてお伝えします。
■カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを均衡させることです。現実的に温室効果ガスを全く排出しないことは難しいため、排出した量から吸収または除去した量を差し引いて「全体としてゼロ」にするという意味で使われています。実質的に排出量をゼロにした状態を「脱炭素」といい、それを実現した社会を「脱炭素社会」と呼ぶのです。日本は2050年までにカーボンニュートラル社会を達成するとしています。それを受けて国の「エネルギー基本計画」も大きく見直しが進んでいます。そして住宅・建築物についても、計画達成に向けて更なる省エネ化を求められることになりました。
■「省エネ基準」とは?
- 外皮熱性能の向上
外皮とは家の外部分を指します。具体的には、屋根や外壁、窓などです。これらの断熱性が高い家でないと、省エネ住宅と認められません。屋根なら小屋裏の断熱材を厚くし、外気温が部屋の中に影響を与えにくいようにします。外壁に関しては、外壁材にこだわることもできますし、断熱材を厚くし、家全体を魔法瓶のようにすることも可能です。窓に関しては、ガラスを3枚にしたトリプルガラスなどで断熱性を高めることができます。
- エネルギー消費を減らせる設備の導入
住宅に住む上で、これからチェックされるのは、「冷暖房設備」「換気設備」「給湯設備」「照明設備」「家電など」の5項目です。これらに関して省エネができていれば、不動産価値も高くなるでしょう。冷暖房設備はエアコンが真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、エアコンの効きが悪ければ光熱費は高くなり、省エネとは言えません。ですから断熱性の高い家が推奨されるのです。換気設備において推奨されるのは、夏場にエアコンを使わずとも涼しい家であり、家の中に風を効率的に取り入れられる家です。他にも、太陽光発電システムやエコキュートなど様々な住宅設備を導入することによって省エネ住宅に貢献できます。
- 自然エネルギーを利用できる住宅作り
省エネ住宅にするには、設備の導入でお金がかかるイメージがあるかもしれません。しかし、実際には自然エネルギーを上手く利用することで初期費用を抑えつつ省エネ住宅にすることも可能です。家のデザインを工夫することで家の中に涼しい風を取り込めるようにできたら自然風を利用できていることになります。高い太陽光パネルを設置しなくても、庇を付けたり、軒を利用するだけでも夏場の暑さを軽減できるでしょう。こういった工夫はパッシブデザインと呼ばれ省エネが実現できます。
■2025年度から適合義務化
2021/4~ 2025年度~
建築物 住宅 建築物 住宅
大規模2000㎡以上 適合義務 届出義務 適合義務 適合義務
中規模300~2000㎡ 適合義務 届出義務 ⇒ 適合義務 適合義務
小規模300㎡未満 説明義務 説明義務 適合義務 適合義務
2025年度からはすべての建築物・住宅において、省エネ基準への適合が義務化されます。ということは・・・適合していない建築物・住宅は建てられないという事です!
■2030年度に省エネ基準がさらに厳しくなる
2030年になると、省エネに特化した住宅であるZEHやZEB水準が省エネ性能に引き上げられ、適合が義務化される予定です。簡単に言えば、家で消費するエネルギーをプラスマイナスゼロにする住宅を作ることが義務化されるわけです。今でも消費エネルギーをゼロにできる住宅はありますが、現時点では住宅設備の導入がほぼ不可欠となっており、初期費用は高くなってしまうことがネックです。